婚約

スウェーデンでは、今なお「婚約(förlovning)」すること自体は珍しいことではありません。

婚約指輪を交換し、お互いの信頼性を強め、いつか結婚することを誓い合う。

比較的早く、結婚に進む場合もあるでしょうし、婚約したものの、結婚の時期は決めず、長く事実婚の状態を続けることもあるでしょう。

現在では、「婚約」に特に法的効果は伴いません。

しかし、歴史的には、婚約を巡る状況は少し異なっていたようです。

現行の婚姻法(Äktenskapsbalk)は、1987年に制定されました。それまでは、1920年に制定された婚姻法(Giftermålsbalk)が適用されていました。

古代ゲルマン慣習法が法典という形で成文化されるようになったのは、12~13世紀のことですが、当時は、全国統一法典はなく、各地方にそれぞれの地方法典がありました。これらによると、婚姻は、挙式をしないで、①婚約(fästning)②父または長兄によって花婿に花嫁を渡す儀式 (giftermål) ③ 同衾 (sängliggning)の3段階を経て成立しました。

旧婚姻法が「Giftermålsbalk」と呼ばれていた所以です。

中世に至り、カトリックがスウェーデンにも影響を及ぼし始めるにつれて、結婚には教会の挙式を必要とする、教会法による婚姻と教会法によらない慣習婚が併存していました。

1734年に、スウェーデンにおける最初の国家法典が制定され、その中で、婚姻は挙式を必要とすると定められましたが、農民の間では、慣習婚が根強く残っていたため、これを「不完全婚」として、婚約した女性が、相手と性的関係を持ったことを要件として妻たる身分の確認判決を得たときに限り、婚姻とほぼ同様の法的効果を与えました(1734年法婚姻編)。

ただ、この制度は、両当事者の結婚の意思に基づかず、女性の意思のみを尊重した裁判所による婚姻強制という性格が顕著だったので、1915年の「婚姻の締結と解消に関する法律」によって廃止されました。

1915年法律は、不完全婚という制度を廃止しましたが、婚約解消に伴う損害賠償規定を設けることで、不完全婚制度が意図していた救済制度を留めることになりました。

同法第1章「婚約」によると、婚約当事者の一方の責任で、婚約が解消された場合、その有責当事者から受けた贈与物の返還を拒否できるとともに、婚姻を目的としてなされた行為の結果生じた積極的及び消極的損害の賠償を請求することができました。

1920年には、1734年法婚姻編の廃止とともに新しい近代的な婚姻法が作られますが、「婚約」の章は,それまま残されました。

時が経ち、1973年に、他の婚姻の成立や解消についての規定が改正されたのと同時に、「婚約当事者は、いかなる法的拘束からも解放すべきである」という理念から、婚約規定は廃止され、婚姻外関係者に対する保護規定は、婚姻法から全面的に姿を消しました。